2008年で最も良かったと思う映画は「おくりびと」です

今日は元日、2009年の初日です。
去年、2008年もそこそこの本数の映画を観ましたが、その中で最も良かったと思うのは11月に観た「おくりびと」です。地味な映画なのですが、映画館で静かに感動して鼻水を垂らしながら観ました。
オーケストラのチェリストになる夢が破れて、故郷に帰った主人公は、ひょんな事から納棺師という職業に就くことになります。
当然のことながら数多くの葬儀に立ち会うことになりますが、人が亡くなるときにはその人と、その周囲の人たちとの人間関係が凝縮され、普段はあまり面に出てこない部分も顕在化します。
片田舎の風呂屋を頑固に続ける母が亡くなり、散々彼女が風呂屋を続けることに反対した息子が「母さんごめんね」と泣き崩れる場面。「おかま」の息子と喧嘩が絶えなかったが、その息子が死ぬときに「やはりおまえは俺の息子なのだ」と号泣する父親。5分くらい遅刻した納棺師を怒鳴りつけた遺族が、儀式を終えた彼らに「本当にありがとう」と深々と頭を下げる場面、などなど。自分自身の体験ともシンクロして、しみじみとさせられます。そしてストーリーはかつて家族を捨てて出て行った主人公の父親の死でクライマックスを迎えます。
人生は様々な事があり、単純では無いけれど、周囲の家族にとって必ずやその人と過ごしたかけがえのない思い出が残されるのです。
最初は納棺師の職業に抵抗があった主人公も、徐々にその大切さを理解するとともに、プロとして一人前に成長して行きます。納棺師の社長を演じる山崎さんと、モックンの演技が良いですね。納棺師の仕事はあまり知らなかったのですが、凛として美しい所作は、なかなかのものです。
脚本も語りすぎず、さらっとして、それでいてツボを押さえており、かつ随所にユーモアをちりばめ、とても良い。クリスマスにチキンを会社でむさぼる様に、動物の死によって人が生かされている概念と、主人公が仕事に完全に慣れた事をだぶらせたり、わかりやすく、上手だと思いました。
ただ、日本人の習慣と「死」の概念にとても依存しているので、私が観たときも近くに英語を話している方がいらしたのですが、果たして理解できるのかなーと思うのですが、モントリオール映画祭で高い評価を得たとのことなので、まんざらでもないのかも。
日本の田園風景とともに、清楚で印象に残る映画ですね。